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第86 回 (2015年1月号)
BITCH
「雌犬」 Roald Dahl

早川文庫『来訪者』所載 田村隆一訳

by 柴田耕太郎


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 文法力をつけたいが、無味乾燥な文法書など読みたくない。
 そんな読者のために、人気小説の翻訳書に見る誤訳・悪訳をとりあげ、文法面から解説してゆく。題材は最近映画化された『チョコレート工場』の原作者で、日本がロケ地になった映画『007は二度死ぬ』の脚本家でもあるロアルド・ダール(Roald Dahl)の短編から任意に選ぶ。いずれも原文で10ページ程の短いものが中心だから、読者も自分で訳してみて、この解説を参考に市販訳との優劣を競ってみてはいかがだろうか。
 冒頭に誤りの種別と誤訳度を示したうえ、原文と邦訳、誤訳箇所を掲げます。どう間違っているのか見当をつけてから、解説を読んでください。パズルを解く気分で、楽しみながら英文法を学びましょう。
誤訳度: *** 致命的誤訳(原文を台無しにする)

** 欠陥的誤訳(原文の理解を損なう)

愛嬌的誤訳(誤差で許される範囲)
BITCH「雌犬」
オズワルド叔父はアンリ・ビオットという化学者と知り合い、空前絶後の媚薬の製造支援をすることにした。ヘビー級のボクサーと女性研究員に試したところ、瞬時に二人は狂乱状態に陥った。ならばと、アメリカ合衆国の大統領がテレビ出演する場で、そのホステス役の全米愛国婦人協会長との愛欲シーンが全米に放映されるよう仕掛けをしようと思い立った。協会長のホーソンビー夫人を訪れ花束を差し出すと、夫人はそれを胸に差そうとしてピンを留めた。するとピンは、仕掛けておいた媚薬入りのカプセルを貫き、媚薬は彼女を野獣と化し、何とオズワルド叔父に襲い掛かった。
(p187-p415)名詞

三年ほど前、わたしはある婦人と週末をすごすためにプロヴァンス地方へでかけたことがあった。彼女に関心を持った理由は、ほかの女性なら筋肉がまったくない部分に強力な筋肉を持っていたというに尽きる
Some three years ago I drove down to Provence to spend a summer weekend with a lady who was interesting to me simply because she possessed an extroadinarily powerful muscle in a region where other women have no muscles at all.
(解説)
直訳ではこの通りだが、面白味がない。オズワルド叔父は、言葉は悪いが「助平」なのだ。region は、身体の部位。muscle は、収縮・弛緩する身体の肉質器官。「他の女にはついていない体の部位に強力な筋肉がついている」のが「唯一関心の素だった」のだ。男なら原文を読んで、いやらしい妄想をしてにやっとするところ。かといって露骨に訳を出すのは品位にかけるし、困ったものだ。
修正訳:体のどこかの部分がめっぽう締りがいいことに尽きる

(p189-p416)名詞

「間に車が走っていても?」 「ええ、どんなに交通が混雑していてもです」
“With the traffic in between?”
“With heavy traffic in between,” he said.

(解説)
この traffic は「(人・車の)往来」 in between は「間に」。heavy は「交通量が多いこと」。渋滞は traffic jam とか congestion
日本語の「混雑」だと(1)にぎわっている、活発である (2)動きがとりにくい、のどちらかあいまい。
修正訳:交通量が多くても

(p199-p420)代名詞

「そうです。その八番目の純粋かつ基本的な匂いこそ、太古の原始人を犬のように振る舞わせた性的な興奮剤なのです。これはひじょうに変わった分子構造を持っておりましてね」
「するとあなたはその分子構造を知っているというのですか?」
「もちろん知っています」
‘Yes,’ he said, ‘the eight pure primary odour is the sexual stimulant that caused primitive man to behave like a dog thousands of years ago. It has a very peculiar molecular structure.’
‘Then you say we know what it is?’ ‘Of course I know what it is.’

(解説)
直訳は「それが現に存在するところのもの」または「それが何であるかということ」。itは、抽象度の高い代名詞で、今文中で問題になっていることを指し、It has a very … のitと同じもの。直近の分子構造でなく今話題にしている八番目の基本芳香のこと。
修正訳:その正体を

(p200-p421)名詞

鼻孔からのぞくふさふさした鼻毛がなにやら小妖精めいた印象を与えていたが、実はそれはカムフラージュだった。
The tufts of hair sprouting from his nostrils gave him a pixie look, but that was camouflage.
(解説)
「小妖精」では可愛らしすぎる。
修正訳:悪がき

(p200-p421)動詞**

彼が道徳心と無関係な男だということだけは明白だったが、その点ではわたしもひけをとらなかった。彼はまた邪悪な人間であった。わたし自身はどう考えても邪悪な人間とは言えないが、他人の邪悪な性質には抗しがたい魅力を感じる。
He was a totally amoral man, that much was clear, but then so was I. He was also a wicked man, and although I cannot in all honesty claim wickedness as one of my own virtues, I find it irresistible in others.
(解説)
claim は、あるものが(この場合自分に悪徳が)実際に当てはまると主張すること。「自分の美点の一つとして邪悪を堂々主張するわけにゆかない」といっている。
修正訳:私自身は正直なところ、自分の性質の邪まな部分を自慢できるものとして胸をはる訳にはいかないが、

(p202-p422)副詞

アンリ・ビオットは招待主の婦人に丁重な詫びと言い訳を述べて、その夜あわただしくパリへ引き揚げた。それから一週間とたたないうちに勤めを辞めて、研究室用の三つの部屋を借りた。場所はセーヌ左岸のブウルヴァール・ラスパーユから少しはなれたリュ・ド・キャセットの、とある建物の三階だった。
Henri Biotte made apologies and excuses to his hostess and rushed back to Paris that night. Within a week he had given up his old job and had rented three rooms to serve as a laboratory. These were on the third floor of a house on the Left Bank, on the Rue de Cassette, just off the Boulevard Raspaille.
(解説)
just off は、横丁に入った。読み方もフランス語に近づけたほうがよい。イギリス、フランスでは一階がグランド・フロア、二階が一階、三階が二階とずれる。
修正訳:セーヌ左岸の、ラスパーユ通りの横を入ったカセット街の、とある建物の四階だった。

(p203-p422)前置詞**

白い実験衣を脱がしてみると、このいかめしい化学者は途方もない技巧をそなえた逞しくしなやかな女そのものであることが判明した。はじめは発振器で、続いて高速遠心分離器で、彼女がおこなった実験は、まさにあっというほどすばらしいものだった。
Beneath her white overall, this rather austere research chemist turned out to be a sinewy and flexible female of immense dexterity. The experiments she performed, first with the oscillator, then with the high-speed centrifuge, were absolutely breathtaking.
(解説)
この女性がオズワルド叔父の性技に翻弄されて、精密機械さながらの反応を示すという叙述。with は、比喩的に随伴・様態と取る。
修正訳:はじめは発振器、続いて高速遠心分離機さながら、彼女が演じた実演は

(p227-p435)代名詞

彼女は一世一代の晴れの舞台を前にして大いにめかしこんでおり、双方とも一語も発しないうちに過ぎ去った二秒間に、わたしは相手のほとんどすべてを見てとった
She was groomed and dressed for the greatest occasion of her life, and in the two seconds that elapsed before either of us spoke, I was able to take most of it in
(解説)
take は、理解する。it は、前文の内容「不愉快な女が最大にめかし込んでいること」。in 以下はめかし込みの具体例。
修正訳:こうしたことが大体わかった。なにしろ

(p232-p437)

あなたを夏の日にたとえましょうか?
Shall I compare thee to a summer’s day?
(解説)
これ、シェークスピアのソネット14番の引き写しだと気付いたろうか。英米人であれば、「国語」の時間に学習していて誰もが知っていることば。詩らしく訳したい。
修正訳:君を夏の一日に譬えようか。 (君の美はもっと優しくもっと穏やかだ…、と続く)

 


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