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第58回 (11月号)
古本屋
by 柴田耕太郎
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 文法力をつけたいが、無味乾燥な文法書など読みたくない。
 そんな読者のために、人気小説の翻訳書に見る誤訳・悪訳を取り上げ、文法面から解説してゆく。題材は最近映画化された『チョコレート工場』の原作者で、日本がロケ地になった映画『007は二度死ぬ』の脚本家でもあるロアルド・ダール(Roald Dahl)の短編から任意に選ぶ。いずれも原文で10ページに満たない短いものだから、読者も自分で訳してみて、この解説を参考に、市販訳との優劣を競ってみてはいかがだろうか。
 今回取り上げるのは、『王女マメーリア』(早川書房、田口俊樹・訳)のなかの『古本屋』(The Bookseller) 以前同じ訳者の手になる『傘男』を検討した時は、これが多少は知られた翻訳家のものかとがっかりした覚えがあるが、この『古本屋』は結構いい。久しぶりに誤訳・悪訳をあげつらう後ろめたさから解放されそう。
 「商品としての翻訳」であれば、翻訳者はみな、この程度の訳文を提供してほしいものだ。  それでも語義の選択で、多少読みにくさが生じている箇所がある。読者の勉学のため、ケチをつけてみよう。

古本屋
(p129)
古びたボール紙と、茶がらの微妙な匂いが鼻をかすめたことだろう。そして店のなかにはたいていいつも、コートにトリルビー帽といった恰好の、寡黙で陰気な客が二、三人いて、初版本はないものかと、ジェイン・オースティンやトロロープやディケンズやジョージ・エリオットなどの全集が並べられた書棚を、隈なく漁っていたことだろう。
If you peerd through the window itself you would see that the walls were lined with books from floor to ceiling, and if you then pushed open the door and went in, you would immediately be assailed by that subtle odour of old cardboard and tea leaves that pervades the interiors of every second-hand bookshop in London. Nearly always, you would find two or three customers in there, silent shadowy figures in overcoats and trilby hats rummaging among the sets of Jane Austen and Trollope and Dickens and George Eliot, hoping to find a first edition.

古びたボール紙: 「古びたボール紙」では、ダンボールでも積み上がっているのかと思ってしまう。古書の臭いを言っているのだ、「古紙」でよいのではないか。

寡黙で陰気な客が二、三人いて: お客の性質でなく、状態を言っているのだ。「客が二、三人物静かな人影となって」
(p130)
そんなときトトル嬢は、
本の遊び紙に鉛筆書きしてある値段を調べ、…
... to Miss Tottle, who checked the price written in pencil on the fly-leaf and accepted the money, ...

本の遊び紙: 辞書にはそう出ているかもしれないが、意味がわかりにくい。「裏表紙の(内側の)遊び(部分)」
(p131)
また、
半分かまたは全表紙美しい仔牛革装丁の、…
.
.. , often very nicely bound in half or even whole calf.

半分かまたは全表紙美しい仔牛革装丁の: 分かりにくい。「仔牛半革か本革綴じ美装の」
(p132)
「小切手は
何人かの事務弁護士が送ってきたわ」
‘The cheque came from some solicitors.'

何人かの: 「何人かの」に力点を置いてしまう。省いてよいのではないか。
(p133)
スミズスン・ブリッグズ・エリス法律事務所
Yours faithfully, Smithson, Briggs and Ellis
スミズスン・ブリッグス・エリス: 中グロだと一人の人物に読めてしまいそうだが…。でもで複数を無視したので、これで良いか。
上院議員はいいさ」とバゲージ氏は言った。
Lords is fine,' Mr Buggage said.

上院議員: 確かにこの意味もあるが、平民でなく「貴族院議員」といった感じ。それが伝わらないと思えば、「貴族」(卿の意)としてはどうか。
(p134)
「いいこと教えようか?そのうち
王家も試してみようや」
‘You know what? he said. ‘One of these days we might even ‘ave a crack at royalty.’

王家: 「王家」とその係累のことだから、「王族」がよいだろう。
(p139)
「それだけのはした金を稼ぐのに結局どれぐらいかかったんだっけ?」
ちょうど十一年よ」とトトル嬢は言った。
「それであなたはわたしにどんな可愛い提案をしようとしたの、ダーリン?」
‘Very nice,’ Mr Buggage said. ‘And ‘ow long's it taken us to gather in those tidy little sums?’
Just eleven years,’ Miss Tottle said. ‘What was that teeny weeny proposal you were going to put to me, lover?’

ちょうど十一年: 「ちょうど」にしてはキリがよくない。「まるまる」。
(p140)
「それがおれの大いなる野望だよ。
賭けてもいいけど、そんなことやったやつはまだだれもいないと思うよ」
‘That’s my big ambition and I’ll bet nobody else ‘as ever done it.’

賭けてもいいけど: そんな大上段に構えていない。イディオムで「きっと」。
(p141)
「…タイル張りの、
格子造りの柱廊のある中庭に案内された途端、あなたは千一夜物語の世界に足を踏み入れるのです…」
‘As the liveried Moorish servant shows you into the tiled and latticed colonnaded court, you step decisively into an illustration of the 1001 Arabian nights ...'

格子造りの: 家の造りにはいうが、柱にはいうまい。「格子縞の」
(p144)
「…世界じゅう
どこでもいいホテルには『フーズ・フー』が置いてあるんだよ。…」
‘... Every good ’otel in the world keeps an English ‘Oo’s ‘Oo. ...’

掛かり方が分かりにくい。「どこでも、いいホテル」と読点を置く。
(p145)
「イギリスの新聞は、こういうところへは航空便で届くじゃないか。ここへ着いたときにロビーで《タイムズ》を買った。そいつは昨日店で使ったのとまったくおんなじやつだった。
だからもう宿題は終わってるんだ。…」
‘You know very well English papers always go airmail to places like this. I bought a Times in the foyer when we arrived. It’s actually the same as I was workin’ on in the office yesterday so I done most of my ’omework already. I’m beginning to fancy a piece of that lobster over there. ...’

宿題: 何の「宿題」かと問われてしまう。「準備」。
(p148)
「おれもさ」とバゲージ氏は言った。「だけどこれだけは確かだな。
おれの眼に狂いはなかったろうが、ええ?ありゃすごい金持ちだぜ。見りゃわかるよ。それにあいつらの間抜けそうなこと。それも一眼でわかるな」
‘Nor me,’ Mr Buggage said. ‘One thing’s for sure. I picked ’em right, didn’t I? They’re rolling in it. That’s obvious. And they’re stupid. That’s even more obvious.’

おれの眼に狂いはなかったろうが: 「何で」が問われてしまう。素直に訳し「なあ、上手に選んだだろう」。
(p155)
「次はライネル・アンストルーサー少将。これだ。『フーズ・フー』には
六インチばかりこいつのことが書いてある。…」
‘The next is Major General Lionel Anstruther. Here ’ee is. Got about six inches in ‘Oo’s ‘Oo. Clubs, Army and Navy. Recreations, Ridin’ to ‘Ounds.’

六インチばかりこいつのことが書いてある: なるほど、こういう意味なのですね。恥ずかしながら、類推できなかった。
(p158)
若者は開いたままになっている、店に出るドアのほうを振り返った。ドアの向こうでは、レインコート姿の
見なれた恰好の客が二、三人、棚から本を取り出して見ていた。
The young man turned towards the still open door that led to the front of the shop. Just the other side of the door there were a couple of the usual kind of customers, men in raincoats, pulling out books and examining them.

見なれた恰好の客: これでは「見知った人」ととれてしまいそう。「よくいそうな客」なのだ。「ごくありふれた客」
(p161)
そのふたりのうちのひとりが
プラスティックのカードを示し、バゲージ氏に言った。「ロンドン警視庁の重罪捜査課のリチャード警部補だ」
One of them held out a plastic card and said to Mr Buggage, ‘Inspector Richards, Serious Crimes Division, Scotland Yard.’

プラスティックのカード: どんなカードかと読者は思ってしまう。ビニール製のカード、つまりごく普通の身分証明書の類のもののこと。「カード」でよいだろう。
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