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第28回 (7月下旬号) 『善女のパン』悪訳編
by 柴田耕太郎
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 文法力をつけたいが、無味乾燥な文法書など読みたくない。
 そんな読者のために、人気小説の翻訳書にみる誤訳・悪訳をとりあげ、文法面から解説してゆく。今回の題材はO・ヘンリー(O Henry)の短編『善女のパン』(WICHES’ LOAVES)。俎上にのせる邦訳は清野暢一郎・訳『オー・ヘンリー珠玉選』(英光社)より。
 冒頭に誤りの種別と誤訳度を示したうえ、原文と邦訳、悪訳箇所を掲げます。どう間違っているのか見当をつけてから、解説を読んでください。パズルを解く気分で、楽しみながら英文法を学びましょう。

悪訳度: *** 致命的悪訳(原文を台無しにする)
** 欠陥的悪訳(原文の理解を損なう)
愛嬌的悪訳(誤差で許される範囲)
善女のパン WICHES’ LOAVES
[ストーリー]
ミス・マーサは街角で小さなパン屋を営んでいる。時々堅いパンを買いにくる芸術家らしい中年の男が気になった。或る時、マーサは彼の求める堅いパンの中に、こっそりバターを挟んでやった。きっと感謝されると思ったのに、後で男はものすごい剣幕で怒鳴り込んできた。消しゴム代わりに使っていた堅パンにしみこんだ油が、制作中の製図をめちゃめちゃにしてしまったのだった。
名詞:**
Many people have married whose chances to do so were much inferior to Miss Marthas.
世の中にはマーサほどの好チャンスがなくても結婚した人がたくさんいる。

[解説]
「好チャンス」では、マーサに今まで結婚の機会がたくさんあったみたいだ。この chances は、強い可能性をいう。マーサは、器量も人品も並み以上だった、と言っているのだ。
修正訳: 世の中にはマーサより条件が劣っても、結婚できた女性がたくさんいる。
●名詞
Once Miss Martha saw a red and brown stain on his fingers.
ある時、ミス・マーサは彼の指に赤と茶色の汚点(しみ)を見た。

[解説]
絵の具が消えずについているのに対し、汚点(しみ)というのはちょっとヘン。

修正訳: まだらに染み付いた赤と茶色
並列:**
It was a Venetian scene. A splendid marble palazzo (so it said on the picture) stood in the foregroundor rather forewater. For the rest there were gondolas (with the lady trailing her hand in the water), clouds, sky, and chiaroscuro in plenty.
それはヴェニスの風景画だった。壮麗な宮殿(とその絵に書いてある)が前景というより手前の水の中に立っていた。そのほかにはゴンドラ(女の人が乗って水に手を浸している)、雲、空、多分の明暗の配合があった。

[解説]
最後の「多分の明暗の配合」が、他の具体的なものと並列しにくい。副詞的に訳す。
修正訳: そのほかにはゴンドラ(女の人が乗って水に手を浸している)、雲、空が、明暗をくっきりさせ描かれていた。
接続詞:
To be able to judge perspective at a glanceand to live on stale bread!
一目で遠近法が批評できて古パンを食べて生きているなんて!

[解説]
この and は逆接。
修正訳: できるのに
中間話法:
What a thing it would be for art and perspective if genius were backed by two thousand dollars in bank, a bakery, and a sympathetic heart toBut these were day-dreams, Miss Martha.
もし天才を後援するに2000ドルの銀行預金とパン屋と思いやり深い心をもってしたならば、美術と遠近法にとってどんなにいいことだろう…。だけどミス・マーサ、それは夢でした。

[解説]
作者の感懐のように訳されているが、ここで結末を暗示させては面白みが欠ける。
マーサの心の声、ととったほうがよいだろう。
修正訳: でも、そんなのは夢ね、ミス・マーサ。
名詞:
For a long time that day her mind dwelt on the subject. She imagined the scene when he should discover her little deception.
その日は永い間このことを考え込んだ。彼が彼女のちょっとしたペテンを発見する時の様子を想像した。

[解説]
「ペテン」は強すぎる。もう少しおさえた訳語にしたほうがよいだろう。
修正訳: ちょっとしたいたずら
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