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第25回 (6月上旬号) 『わがままな巨人』誤訳編
by 柴田耕太郎
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 文法力をつけたいが、無味乾燥な文法書など読みたくない。
 そんな読者のために、人気小説の翻訳書にみる誤訳・悪訳をとりあげ、文法面から解説してゆく。今回の題材はオスカー・ワイルド(Oscar Wilde)の短編『わがままな巨人』(The Selfish Giant)。俎上にのせる邦訳は西村孝次・訳『幸福な王子』(新潮文庫)より。
 冒頭に誤りの種別と誤訳度を示したうえ、原文と邦訳、誤訳箇所を掲げます。どう間違っているのか見当をつけてから、解説を読んでください。パズルを解く気分で、楽しみながら英文法を学びましょう。

誤訳度: *** 致命的誤訳(原文を台無しにする)
** 欠陥的誤訳(原文の理解を損なう)
愛嬌的誤訳(誤差で許される範囲)
わがままな巨人 The Selfish Giant
[ストーリー]
美しい庭で遊んでいた子供たちは、持ち主の巨人に突然追い出される。だがそのとたん、庭は冬となってしまった。あるとき、庭の壁の穴をくぐって子供たちが入ってくると、庭はいっぺんに花が咲き乱れた。自分の意地悪を反省した巨人は、ひとりだけ木に登れないで泣いている小さな子に同情し、木のうえにそっと乗せてやった。だがその子はそれから一度も庭にやってこない。冬のある日、巨人が庭へ眼をやると、一本の木が金色に輝き、銀色の果実が実っていた。その下に、あの小さな子が立っていた。喜んで近づいた巨人はその子の手と足に釘の跡があるのに気づいた。そんなことをした奴を懲らしめてやると息巻く巨人に、その子は言った。「これは愛の傷。私を庭で遊ばせてくれたそなたを天国に案内しよう」。子供たちが庭にやってくると、花に埋もれて巨人は死んでいた。
名詞:***
One day the Giant came back. He had been to visit his friend the Cornish ogre, and had stayed with him for seven years. After the seven years were over he had said all that he had to say, for his conversation was limited, and he determined to return to his own castle.
ある日、大男が帰ってきました。友達のコーンウォールの人食い鬼を訪ねにいって、七年間もいっしょにいたのでした。七年たつと、大男は話すべきことはみんな話してしまいました、話題にも限りがあったからです。それで自分の邸へ帰ろうと決心しました。

[解説]
「話題にも限りがある」では、「人と人の間で話す事柄には限りがある」と読めてしまう。その場合の「話題」は
the topics of conversation とでもなろう。his conversation となっているところに注目。ここの conversation は「社交的な話術」(=ability to talk socially with others)の意味。また limited は他動詞 limit「限界を設ける」の受身形ではなく、「想像力に乏しい、思考の独創性に欠ける」の意味の過去分詞形の形容詞。His conversation was limited.He was limited in conversation. つまり、大男は口下手、と言っている。
「七年たつと、大男は話すべきことはみんな話してしまいました」もまずい。これでは、大男が人食い鬼とよもやま話をずっとしていたようだ。直訳は
「七年たった後では、大男は言わなければならないすべてのことを言い終わりました」…七年かかってやっと、言うべき事を言い終えた、のだ。
 さらにもう一つ。英語を仕事にしているかなりの人が
for を正しく理解していないようだ。それで「というのは…だからだ」式の因果関係の強い訳をあてはめて、論理が通らなくなる、またはこの訳者のように、無理に前後を結び付けようと論理を曲げてしまう(話題にも限りがあったからです)ことになる…。for については、来月、本コラムの姉妹編『英文教室 エッセイ』(アイディ ホームページより、アクセス可)でとりあげることにしよう。
修正訳: 七年かかってやっと、大男は話すべきことを全部言い終えました。なにしろしゃべるのが、苦手だったのです。
名詞:
The Snow covered up the grass with her great white cloak, and the Frost painted all the trees silver. Then they invited the North Wind to stay with them, and he came. He was wrapped in furs, and he roared all day about the garden, and blew the chimney-pots down.
雪はその大きな白い外套で草をおおい、霜は木々をすっかり銀色に塗りあげました。それからふたりはとまりに来いと北風を招いたので、北風がやってきました。毛皮にくるまり、一日じゅう庭のあたりでうなり、煙突を吹き落しました。

[解説]
chimney-pot は「煙突頭部につけた煙り出し」のこと。
修正訳: 煙突の煙り出しを吹き飛ばしてしまいました。
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