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第23回 (5月上旬号) 『海の中へ』誤訳編
by 柴田耕太郎
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 文法力をつけたいが、無味乾燥な文法書など読みたくない。
 そんな読者のために、人気小説の翻訳書に見る誤訳・悪訳を取り上げ、文法面から解説してゆく。題材は最近映画化された『チョコレート工場』の原作者で、日本がロケ地になった映画『007は二度死ぬ』の脚本家でもあるロアルド・ダール(Roald Dahl)の短編から選ぶ。いずれも原文で10ページに満たない短いものだから、読者も自分で訳してみて、この解説を参考に、市販訳との優劣を競ってみてはいかがだろうか。
 冒頭に誤りの種別と誤訳度を示したうえ、原文と邦訳、誤訳箇所を掲げます。どう間違っているのか見当をつけてから、解説を読んでください。パズルを解く気分で、楽しみながら英文法を学びましょう。
 今回取り上げるのは、『あなたに似たひと』 (早川書房、田村隆一・訳) のなかの『海の中に』(Dip in the Pool)。

誤訳度: *** 致命的誤訳(原文を台無しにする)
** 欠陥的誤訳(原文の理解を損なう)
愛嬌的誤訳(誤差で許される範囲)
海の中へ
[ストーリー]
大型客船で船旅を楽しむボティブル氏は、船長主催の「一昼夜航続距離当てオークション」で一儲けをたくらむ。船長が予想した航続距離515マイルに対し、マイナス10マイル未満に入れ札したのだ。荒天のゆえの予想だったが、翌日の海は鏡のように静か。船を遅らせるため、ボティブル氏は救助を当てにして海に飛び込むが、甲板にいて助けを求めてくれるものと当てにしていた老女が、なぜか反応を示さず、ボティブル氏は溺れ死ぬ運命に…。
前置詞:***
By the time evening came the passengers, with twelve hours of good weather behind them, were beginning to feel confident, and at eight oclock that night the main dining-room was filled with people eating and drinking with the assured, complacent air of seasoned sailors.
夕方近くなると、あと十二時間の好天にめぐまれた航海をひかえて、船客たちもどうやら落ちついてきたようだ。そして夜の八時になると、船の大食堂は、いかにも海になれた古武士よろしく、自信たっぷりに飲み食いする連中でいっぱいになった。

[解説]
「自分たち(
thempassengers)の背後の(behind)12時間の好天を伴った船客たち(passengers)は」が直訳。これまでの12時間が好天だったのだ。
修正訳: これまで12時間好天が続いたせいで、船客たちは
イディオム:**
Well, the purser said, there she goes. He glanced around with approval at the remainder of his flock who were sitting quiet, looking complacent, their faces reflecting openly that extraordinary pride that travelers seem to take in being recognized as good sailors.
やれやれ、あの女がいなくなった」とつぶやきながら事務長は、そこにふみとどまった連中をグルッと見まわした。彼らは、“船に強い”とみとめられたりすると、よく旅行者がしめす、あの法外な自慢の色をあからさまに顔に出して、大満悦といった様子で、悠然と椅子に腰をおろしているのだ。

[解説]
there she(he) goes. はイディオムで、悪い予想の実現に対し「ほら、やっぱりね」「言った通りだろ」「また、始まった」という意味。ここは、船に弱い女性がすごすご船室に退散するのを皮肉った言い方。
修正訳: 「ほら、これですもんね」
形容詞:
They were grouping themselves politely around the various tables, the men a little stiff in their dinner jackets, a little pink and overshaved and stiff beside their cool white-armed women.
それぞれ、いろんなテーブルにひとかたまりとなって、おとなしく坐っていた。男たちは、ディナー・ジャケットに身をかため、白い腕をあらわにした、落ちつきはらっているつれの婦人連中のそばで、剃りあとの青々とした頬をいくぶん上気させながら、身をこわばらせていた

[解説]
ディナー・ジャケットを着た男たちの描写部分。形容詞の並列(1
and 2 and 3)で前の the men に掛かる。overshaved の意味がとりにくいが、「剃りあとの青々とした」でよいのだろうか。
a little pink は「酒でほんのり赤くなっている」overshaved は「剃りすぎ」ではなく「だいぶ酔いが回った」。stiff も「酒に酔った」。つまりここ、同義語を三つ並べているととりたいが、どうだろう。前の stiff は「畏まって」(元訳では「おとなしく」)ととると全体が面白いかもしれない。
修正訳: ちょっぴり顔を上気させ、ほろ酔いかげんだった.
前置詞、比較級:**
As you all know, the auctioneer was saying, low field covers every number below the smallest number in the range, in this case every number below five hundred and five. So, if you think this ship is going to cover less than five hundred and five miles in the twenty-four hours ending at noon tomorrow, you better get in and buy this number. So what am I bid?
「みなさん、ご存知のように」と競売人が喋っている、「低ナンバー圏は、範囲の一番若いナンバーから以下のすべてのナンバーにおよびます。ですから、この場合は、五百五マイル以下のナンバーが全部ふくまれることになりますよ。いいですか、この船が、明日正午までの二十四時間に、五百五マイル以下しか進まないとお考えでしたら、この低ナンバー圏をお買いになればいいのです。さあ、いくらからせりましょうか?」

[解説]
below は「…より下」。less than は「…より少ない」。つまり「…未満」ということ。「…以下」という言い方は英語にはないので、注意が必要。
修正訳: 下。より下。未満。
形容詞:**
She turned and smiled at him, a surprisingly lovely, almost a beautiful smile, although the face itself was very plain. Hullo, she answered him.
女はふりむくと、微笑をうかべた。目をみはらせるような、美しい微笑だった。しかし顔そのものは、いたって無表情だった。「今日は」と女は言葉をかえした。

[解説]
この plain は「ブザイク」の意味。
修正訳: いたって平凡だった。
イディオム:
And dont you ever go wandering about on deck alone like this again. You know quite well youre meant to wait for me.
「これから、二度と今日のように、デッキをひとり歩きしては駄目。自分でも、わたしが来なくちゃこまるってこと、よく知ってるくせに

[解説]
be meant to do は(1)…することを意図されている、…の運命である(2)…しなければならない、のうちここでは(2)。
修正訳: 私を待ってなくちゃいけないの、よく知ってるでしょ。→私と一緒じゃなきゃ駄目なの、知ってるでしょ。
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