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第71回 (2013年3月号)
Katina 「カティーナ」

永井淳訳、早川書房刊『飛行士たちの話』より
by 柴田耕太郎
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 文法力をつけたいが、無味乾燥な文法書など読みたくない。
 そんな読者のために、人気小説の翻訳書に見る誤訳・悪訳をとりあげ、文法面から解説してゆく。題材は最近映画化された『チョコレート工場』の原作者で、日本がロケ地になった映画『007は二度死ぬ』の脚本家でもあるロアルド・ダール(Roald Dahl)の短編から任意に選ぶ。いずれも原文で10ページ程の短いものが中心だから、読者も自分で訳してみて、この解説を参考に市販訳との優劣を競ってみてはいかがだろうか。
 冒頭に誤りの種別と誤訳度を示したうえ、原文と邦訳、誤訳箇所を掲げます。どう間違っているのか見当をつけてから、解説を読んでください。パズルを解く気分で、楽しみながら英文法を学びましょう。
誤訳度: *** 致命的誤訳(原文を台無しにする)
** 欠陥的誤訳(原文の理解を損なう)
愛嬌的誤訳(誤差で許される範囲)
Katina 「カティーナ」
ストーリー
ギリシア作戦に従事した英国空軍戦闘機隊。ドイツ軍の爆撃で瓦礫となった街角に幼い少女を見つける。肉親を失ったその子カティーナをマスコットのようにして、戦線の移動に伴い連れ歩く。ある時、敵の急襲があり、皆防空壕に逃げ惑うなか、カティーナが滑走路に飛び出し、迫りくるドイツ機に向けて、こぶしを振り上げ何か叫ぶ。瞬時のち、少女は地に倒れ、再び起き上がらなかった。
(訳文p129—原文p259:以下同) 
ときおり腰をかがめて廃墟のなかをのぞきこみ、ある名前を繰りかえし呼んだ。
Sometimes he would bend down and peer into the ruins, repeating a name over and over again.

(コメント)
「ある名前」では次にどんな名前かと期待してしまうが出てこない。a は(1)一つ、に力点(2)種類、に力点、の二要素あるが、ここは(1)。
修正訳:
「だれかの名前を」あるいはさらに緩く「何か名前を」

(p132p261)
その二日間におこなわれたことはほぼそれだけだったし、それ以外のことをする時間はなかった
That was about all there was or all there was time for.

(コメント)
下線部を一文にすれば There was time for all. この all は前文で述べられた戦さ騒ぎのこと。time は不可算名詞で、時の流れ。直訳すれば「(そうしたこと)すべてのために時の流れは存在した」。or の前の節と同じことを強調的に言っている。元訳だと「時間の余裕」が示され、少しずれるのではないか。
修正訳:
時間はそのためにだけ流れていた

(p135p262) 
テントの垂れ幕を通して雨を眺めているうちに、わたしは山々がわれわれの敵にまわっていたことをはっきりと知った。胃袋がそれを感じたのだ。
And as I stood there looking at the rain through the tent flap, I knew for certain that the mountains had turned against us. I could feel it in my stomach.

(コメント)
原文にも「胃袋」とあるが、食欲のことを言っているわけでないので、日本語でしっくりこない。意味を広げて訳してはどうか。
修正訳:
腹のあたりで

(p137p263)
われわれが少女を囲んでパラシュートをはずし、少女が帰らない飛行機のことを質問しようとしたとき、だれかが叫んだ。「おい、敵機だ!」
We were standing around taking off our parachutes and she was trying to ask us about it, when suddenly someone said, 'Look out. Here they come.'

(コメント)
前後の流れからこう訳したのだろうが、stand around は、何となく辺りに立っていること。
修正訳:
そのままの位置でパラシュートをはずし

(p142p266) 
われわれはカティーナのために用意しておいたテントを見せ、フィンが前の晩アテネでなにやら謎めいた手段で手に入れた小さな木綿のパジャマを見せた。
We showed her the tent which we had prepared for her and we showed her the small cotton nightdress which Fin had obtained in some mysterious way the night before in Athens.

(コメント)**
この mysterious は、そんなおおげさなものでない。
修正訳:
我々はカティーナのために用意したテントを見せた。そして前の晩にアテネでなにやらわけありの方法でフィンが手に入れた木綿の寝巻きを差し出した。」

(p146p268)
それから北に向って雄大なテルモピレー峠へ飛んだが、海に向かってゆっくりと南進する長い車両の列が眼下に見えた。
Then we flew up the great Thermopylae Pass and I saw long lines of vehicles moving slowly southwards towards the sea.

(コメント)**
この great は、歴史に名高いの意。レオニダス率いるスパルタ軍が、ペルシャ軍の侵攻を阻止した峠。
修正訳:
かの名高いテレモピレー峠

(p147p269) 
それは復讐の権化と化した暴徒であり、彼らを非難する気にはなれなかったが、ほかにも考慮しなければならないことがあった
It was a mob intent upon vengeance and one could not blame them; but there were other considerations.

(コメント)
ちょっと意味がずれる。この consideration は可算名詞で、考えねばならないこと⇒配慮すべき点。
例:
The friendship of the members is a major consideration in the party.
(会員間の親睦を深めることがそのパーティーの主旨です)
修正訳:
こちらにもやらねばならぬことがあった。

(p151p271)
彼の死体はどこか荒涼とした山腹で、飛行機の残骸にはさまれているのだろうか、それとも海の底に沈んでいるのだろうか。いずれにしても手厚く葬ってやりたかったのにと、そればかりが気になった
I wondered whether his body lay tangled in the wreckage of his aircraft on the side of some bleak mountain or whether it was at the bottom of the sea, and I hoped only that he had had a decent funeral.

(コメント)
意訳しているのだろうが少しずれる。直訳すれば「彼がきちんとした終焉を迎え得た事だけを願った」。散り際が立派であること、勇士にふさわしい死に方。異常な苦しみを味わったり、惨めな遺体の状態にないこと。それが a decent funeral の中味だろう。
修正訳:
勇士にふさわしい最後であったことだけを願った

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